かつてIT業界で将来を嘱望されたSE、K島K太郎は、40歳を迎えた今も中小企業で働き続けていた。かつては華やかなプロジェクトに携わり、周囲から一目置かれる存在だった彼だが、近年は仕事への情熱を失い、日々の業務に追われるだけの生活を送っていた。
そんなK太郎に転機が訪れたのは、数ヶ月前のことだった。大手企業からのヘッドハンティングを受け、年収2倍の破格のオファーを受けたのだ。これはまさに夢のような話であり、K太郎自身も転職を決意。しかし、妻の美香に相談したところ、予想外の反対を受けた。
美香は専業主婦で、2人の子供を育てていた。健太郎の転職によって、生活環境が大きく変わることを懸念したのだ。転勤の可能性、長時間労働、さらには収入減の可能性も指摘し、健太郎の夢を断ち切ろうとした。
K太郎は妻の言葉を理解しつつも、どうしても諦めきれなかった。転職は自分の人生を変えるチャンスであり、もう一度輝きたいという強い思いがあった。何度も美香と話し合いを重ね、説得を試みたが、彼女の心は変わらなかった。
数週間後、K太郎は転職を断念することを決意した。 妻との関係悪化を避け、家族の幸せを守ることを選んだのだ。しかし、彼の心の中には、消えることのない喪失感と後悔が残っていた。
2次派遣SEをやっていたころ、ちょくちょく現場が同じになる同僚がいました。
Kさんという同僚です。私より2つ年下。
新しいことには、多少尻込みする傾向があったものの、
技術もぐんぐん吸収しますし、10年以上の経験もあります。
彼は人当たりがすごく柔らかくて、
難しい技術を人にわかりやすく説明するのがすごく上手でしたね。
私が転職を本気で考えていた時期に、Kさんに話をしたことがありました。
Kさんは相当驚いていましたね。
転職エージェントに相談したことを話しました。
年収420万円が600万円になる見込みになることも。
彼は、年収アップがどうこうよりも、、
転職すること自体に驚いていました。
「転職なんか、キケンじゃないですか?」
Kさんはそう言っていました。
私もそこは相当悩みました。
転職に失敗して、今の会社に土下座して出戻りするイメージが頭に浮かんで、相当悩みましたからね。
自分が勘違い野郎なんじゃないかとか、リアルに路頭に迷う心配とか、
寝られないほど悩みましたからね。
ただ、それ以上に、このまま会社にいて20年経ったらどうなってるだろう?って考えると、恐ろしくてたまらなかったんです。
そのことは、うまくKさんに伝えられませんでした。
「そうかも知れないんだけどね、やってみようと思って」
そう答えるのが精一杯でした。
Kさんは、
「うちは嫁さんが転職なんか絶対許してくれないから。ローンも組んでるし」
と言っていました。
転職の話題になると…
と責められるそうです。
Kさんにとって、転職は奥さんが決して許さない、選択不可能なことのようでした。
Kさんは性格のやさしい人でしたから、そう言われると強引に転職したりできないんでしょう。
無理に転職を進めると、離婚の話題になる。奥さんも必死なんでしょう。
でも、無理して夫が今の仕事を続けて、結局体を壊して会社も退職ということになったら、後悔してもしきれません。
仕事を続けても後悔するかも知れない。
仕事をやめても後悔するかも知れない。
私も転職のことでは、妻と相当やりあいました。
このまま続けていたら、心も体も病んでしまう。そうなったら、やり直すこともできない。
少しイヤなくらいなら我慢できるけど、もう限界を超えている。
このまま、今の会社で仕事を続けたら、再起不能にぶっ壊れる自信がある!
と私は言い放ちました。
少なくとも妻には「現状維持は無理なんだ…」ということが伝わったようで、全く納得はしてませんでしたが、しぶしぶ転職OKとなりました。
その後、転職失敗していたら「ほらみたことか!」と、妻にずっと責められていたことでしょう。
逆に、会社を辞めずに仕事を続けて体を壊していたら「やっぱりあのとき、転職していれば!」と思ったことでしょう。
だけど、事情は各家庭で違うもの。
最終的にはKさんが決めた道です。
私がどうこういうことじゃないと思って、それ以上は何も言いませんでした。
私がその会社を退社するとき、
Kさんに「何かあったら、いつでも連絡してね」
と伝えましたが、タダの社交辞令と受け取られたかも知れません。
その後、連絡はなかったです。
彼は今も、キケンな転職を避けて、あの会社でがんばっているのかも知れません。
それも人生の選択だと思います。